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満員電車の中で大泣きする赤ちゃん 日本の待機児童問題を解決する方法

満員電車に赤ん坊を乗せる母親は日本では珍しい光景ではありません。

またそのような状況で赤ん坊が泣き出すこともあります。

「赤ん坊は泣くことが仕事だから」と怪訝な顔一つしない人もいれば、母親を睨みつける人もいます。

その場にいる誰一人として悪い人はおらず、赤ん坊、母親含めて全員が被害者といってもいい状況です。

日本は「少子化問題」を抱えている国です。ですがその反面、「待機児童問題」も抱えています。子どもが少なくなっているのになぜ待機児童問題?と思う人もいるでしょう。

今回は待機児童問題がなぜ起こっているか、そしてその解決方法について考察します。

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待機児童数 80万人

 厚生労働省が発表した平成27年4月の待機児童数は2万3千人です。

そして平成27年10月は4万5千人です。

待機児童数は4月が少なくそれ以外の月は増加する傾向があります。

それは保育園は4月に対して受け入れ体制を整えるためそれ以外の年度途中での受け入れは難しいからです。

母親が育児休業明けなどに保育の申し込みをしても4月以外であれば受け入れられる場合が少なく待機児童数が増加する結果となります。

 

厚生労働省が発表している人数は認可保育所に申し込んだ人数のみで数えられています。そもそも受からないと諦めて申し込みをしていない場合などは数えられていません。それらを含めた「潜在的待機児童数」は正確には把握が出来ない状況ですが厚生労働省がおこなった「待機児童ゼロ作戦に基づくニーズ調査結果」によると80万人程度との報告があります。

 

待機児童の原因

 待機児童が最も多いには東京都です。また待機児童数の半数超が首都圏1都3県(東京・神奈川・埼玉・千葉)および近畿圏(大阪・兵庫)に集中しています。

ここから分かるように主な原因は大都市への人口集中です。

またそれ以外にも共働き家族の増加や家庭環境の多様化など社会構造が大きく変化したために保育所を必要とする子育て家庭が急増したことが原因です。

 

育児については保育園にあずける方法が日本では一般的ですが他の先進国ではベビーシッターを利用する家庭が多いです。

日本ではなぜベビーシッターの利用が広まらないか調べてみました。

 

ベビーシッターの料金

 料金はサービス内容によって大きく変わるため、かなり開きがあり1時間当り1000円~4500円となります。平均的な相場としては2,000円前後となっています。

利用については会費を払い定期的利用する場合とその都度利用する場合があります。

1回辺りの料金は定期的に利用する場合が安いです。

入会金が10,000円~20,000円ほどかかり月会費が1,000円程度必要で週1回以上、月2回以上などの条件がある場合もあります。

またベビーシッターを利用する場合にはベビーシッターの交通費を負担する必要があります。

 

1ヶ月辺りの利用料金

1時間2,000円で1回2時間、交通費は片道500円で週3日利用した場合

 

 1回 2000円×2時間 +交通費(片道500円×2)=5,000円
月   5,000円×週3回×4周 = 60,000円

 

月で6万円となります。

1回あたり2時間で周3回でこの金額ですから一般的な家庭では高いという状況です。

 

 一方アメリカでは裕福な家庭でなくても利用をしています。

ニューヨークなどの都市部では1時間辺り15.34ドルで日本円では 1,718円 です。デンバー、フロリダでは8~10ドルドルで日本円では896円~1,120円となります。( 1ドル112円で計算)

 アメリカでは中学生~大学生がアルバイトでベビーシッターをおこなっているため、安いベビーシッターを探すことが可能な環境にあります。

またアメリカでは州の法律で12歳以下の子供だけで留守番をさせることは違法となるためベビーシッターの利用は普及しています。

 

ベビーシッターの制度

ベビーシッターは資格がなくても可能です。保育士や幼稚園教諭とは異なり特定の専門学校や大学等を出ていなくてもベビーシッターと名乗り、仕事をすることが出来ます。

この誰でも出来るという点が日本人には特に抵抗があるように感じます。

大切な赤ん坊をよく分からない人に預けるということは親の立場では躊躇する人もいるのではないかと思います。

 

日本では国家資格はありませんが、厚生労働省が支援している「公益社団法人全国保育サービス協会」による「ベビーシッター資格認定試験」があります。

5.5日の研修および筆記(5肢択一)40問と論文400文字以内の試験となります。

合格率は高く80%となります。

 

ベビーシッターの制度

「ベビーシッター資格認定試験」は合格率が80%と高いですが受験するには前提条件があります。それは「ベビーシッターの実務経験が必要」です。

ベビーシッターの実務経験がない人は試験を受けることが出来ないのです。

この要件がある限りベビーシッターは狭き門となっています。

 

ベビーシッターに適している人

ベビーシッターの経験はなくても自分の子どもを育てた経験のある女性は日本にも多くいます。

総務省統計局によると専業主婦の世代別人数は次の数となります。

30歳~39歳 217万人
40歳~49歳 186万人
50歳~59歳 182万人
60歳~69歳 395万人

参考:統計表一覧 政府統計の総合窓口 GL08020103 表番号222

 

専業主婦で子育ても落ち着き体力的にも働ける世代として40歳~59歳を考えた場合、合計368万人います。

子どもを生む世帯は全体の8割ですので294万人(368万人×0.8)が子育て経験があり働いていない人の数となります。

待機児童数80万人に対して3倍以上の294万人が潜在的ヘルパー数としているのです。

 

働かないことを選ぶ理由

 主婦の方が働かないことを選択する理由として日本では優遇される点があります。

近年見直しがされ今後も変わっていくことが予想されますが配偶者控除という制度です。配偶者の年収が103万までであれば扶養者は税制面で優遇される制度です。(2018年からは150万円に引き上げられます。)

この制度の影響で配偶者である主婦は働き方を税制面の優遇によってセーブするケースがあります。

 

この配偶者控除は今後廃止され夫婦控除が導入される見込みです。

しかしながら社会保険の制度が別にあり主婦の収入が130万円を超えると、年金や健康保険の保険料負担が生じてしまいます。

これが130万の壁と言われいます。

社会保険に加入すると将来受け取る厚生年金額は増えます。また傷病手当金や出産手当金を受け取れるメリットもあります。

一般的には130万を越えると社会保険を払う必要があり「損をする」と広まっていますがメリットもあることを知って働き方を選択する必要があります。

 

政府のベビーシッター支援制度

政府は2017年度からベビーシッターの半額補助制度をおこないます。

しかしながら早朝・夜間に限られており利用者の所得によって補助額の上限を設ける見込みで、10億円程度の予算を想定している状況です。

 

ベビーシッターを増加させるには

日本のベビーシッター数は2万1千人です。(「公益社団法人全国保育サービス協会」の登録事業所の人数)

待機児童数が80万人の日本ではまだまだ少ない状況です。

 

財務省の試算では、「配偶者控除」の廃止による増収額を平成26年度予算ベースの国税分で、6,000億円程度としています。

日本は年金や医療費負担で苦しい状況ですが財源をベビーシッター制度に充当し、また資格取得の制度の見直しをおこない女性の社会進出を後押しすることが待機児童問題の解決に繋がることとなります。

 

家庭訪問保育の理論と実際: 居宅訪問型保育基礎研修テキスト・一般型家庭訪問保育学習テキスト

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